第53章 アンバランス
黒尾side
『そんな奴だとは思わなかった』
そう吐き捨てて、葵は俺に背中を向けて走っていった
研磨
「クロ、葵怒らせた……」
「わかってるっつーの………」
研磨
「……昨日の夜、クロ達が自主練してた時に葵が音駒の教室に来た
葵、代表に戻ったんだって」
「は?………あいつ、部活と掛け持ちしてるってことなのか?
そんなことしたら……」
研磨
「多分、もたない」
研磨の顔が暗くなる
あいつのことだ
代表に戻ったと言っても、自分の身体のことは言わないだろう
「烏野のやつらは、知ってたのか?」
烏野の主将、澤村に聞く
澤村
「ごく一部だけだ
そのことも、あのことも」
木兎が眉を八の字に下げて、顔の前で両手をあわす
木兎
「スマン………黒尾
俺のせいだよな…」
「いや、俺も悪かった」
練習試合が再開しても、あいつは参加しなかった
発作もすこし出ていたみたいだし、俺の中には不安の渦がまく
試合もあまり集中できず、焦ってばかりだった
俺は、軽く舌打ちをした