第53章 アンバランス
呼吸しづらい胸元を抑えながら、私は渡り廊下をトボトボ歩いていた
昼過ぎてすぐの練習試合は参加しなかった
メンバーには申し訳ない
気温の上昇に伴って、試合の間に小休憩が挟まれている
たぶん、今そのくらいの時間だろうか
その間に戻って、次の練習試合には参加しよう、そう思って長い長い渡り廊下に差し掛かる
外で何かしているみたい
水が飛び散り、光の反射でキラキラと輝いている
そこには、森然の部員達が上半身裸で、びしょ濡れになりながらも楽しそうに水遊びをしている
そこに、日向も何故か混じっていた
日向
「あ!津田!!」
葵
「随分涼しそうだね……」
日向
「津田、勝負だーッ!」
私が歩を進めようとしたその時、視界の隅で日向が素早くホースを手にとって、先端をつまむ
振り返ると同時に、聞こえてきたのは
「っ!葵に水は――!」
葵
「キャッ!」
見事にずぶ濡れにされた
そして、今最も顔を合わせたくない相手が駆け寄ってくる
葵
「き、きもちわるい………」
中につけているさらしや包帯も濡れてて、ペットリと身体に貼り付いている
上半身ほとんど濡れてて、確かに涼しいがこれじゃあ気持ち悪くて居心地悪い
クロ
「来い」
葵
「えっ、ちょっと!」
ぐいっと腕を引っ張られ、私はさっき来た道をまた戻っていくことになった