第53章 アンバランス
ちょうど今いる反対側が、体育館で陰になっていて涼しそうだった
そこへ行くと――
葵
「あ。」
つい声が出てしまった
そこに居たのは蛍だった
彼は私を見るなり下ろしていた腰をあげて、立ち去ろうとした
私は、思わず彼を呼び止めていた
葵
「蛍!待って……
ごめん、私が変なこと言っちゃったから怒ってるんだよね………
ほんと、ホントにごめんなさい」
蛍
「………なんで君が謝ってるの?」
葵
「なんでって……だから――」
私に背中を見せていた彼は、くるりとこちらに向き直る
蛍
「君は別に何も悪くないデショ
酷いこと言ったのは僕の方でしょ」
彼はバツの悪そうな顔をして、私から目をそらす
葵
「…………プッ
ククッ、クッ、アハ……アハハハっ」
蛍
「なんで笑ってんの」
葵
「だって……!だって蛍がそんなこというなんて!
影山とかには言わないのに!!」
蛍
「なんで王様がでてくるの
……ほんと、葵は理解不能だよね」
葵
「なんでさ」
蛍
「自分に聞けば?」
私達は、日当の方へ一緒に歩いて行った