第52章 表と裏
葵
(ここはどこ……?)
少し歩けば見慣れない風景が続く
宛もないけど、地面を踏みしめていく
そのたびに、足元の草が足音を隠していく
『ほら、はやくしないと置いていくぞ!』
葵
(あれは………大地さん?)
『はやくはやく!!』
葵
(菅原さんに、旭さん………?)
『何してるの 早くしなよ』
後ろを振り返る
葵
(け……い?)
一瞬目の前がカッ、と眩しくなる
目をギュッとつむり、私は暗いまま落ちていく気がした
《ほら、はやくしないと――――》
葵
(なにいって………きこえ……な)
葵
「!!」
エンジン音が静かにこだまするバス
周りを見るとみんなスヤスヤと眠っていた
隣を見ても誰も座っていない
葵
「…………」
目はすっかり覚めてしまっている
やることも、話す相手もいない
さすがに運転してくれている滝ノ上さんに話しかけるわけにはいかないだろうし
『チャンスを貪り尽くしましょう』
武田先生が昨日言っていた言葉
そう、これから東京へ遠征に行くのだ
まるっと1週間
私達は、強くなるために