第50章 各々の休息
目が覚めた時には、高速道路からは降りていてもうすぐ目的地へと付くところだった
そう、私が今から行く場所は東京にある世界ユース達が練習する体育館
水落に場所を教えてもらい、向こうで落ち合うことになっている
バスが止まる
ここから少し歩かなければいけない
体育館前には、ニコニコしながら他の選手と話をする水落の姿が見えた
彼は私に気づき、大きく一、二振り手をぶんぶん頭上で振ってはニコニコした顔のまま駆け寄ってきた
この前まで私を脅すような顔つきも今は微塵もない
出会った当初の、人懐こそうな顔
はあ、と私はため息をついてしまった
水落
「待ってたよ!来てくれたんだね!!」
葵
「強くなりたいので」
水落
「どう?調子は」
葵
「いつもどおりです」
水落
「あれ、なんか怒ってる?」
葵
「いつもどおりです」
そう言って、私は中へと入っていった
「ねぇ、あれ津田 葵じゃない?」
「うそ、彼女死んだかと思った」
「やめなよー でも、あの子がきたらウチら試合やりにくくなるわ」
「だよね〜 だってもう何年も抜けてたのに今更だよね」
「ていうか、よく戻ってこれたよね」
周りからは冷たい視線
わざと聞こえるように言われる悪口
ああ、懐かしいなあなんて思いながら私は飄々と歩いていった
葵
(すぐに認めさせてやる……)
拳を握りしめ、監督のもとへと向かった