第48章 ほどけぬ糸
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俺が葵に対する感情以外は隣に座って静かに耳を傾けてくれた澤村に話した
セミが夜の静けさにこだまする
澤村
「…………アイツは、天才じゃないって
烏養さんが言ってた」
この静けさに合わせるかのように、澤村は口を開く
俺は黙って、ただ真正面の冷たい地面を見つめながら次の言葉を待った
澤村
「アイツは、努力の天才だって」
黒尾
「! あぁ、言われてみれば………そうだな」
上を見上げると、夏の星が瞬いている
澤村
「なあ………」
黒尾
「ん?」
澤村
「烏養さんに言おうか……迷ってんだけど
先にお前に知らせたほうがいいと思って」
黒尾
「なんだよ」
澤村は、言いにくそうに口ごもった
澤村
「お前、水落ってやつ
知ってる?」
黒尾
「? 知らねぇけど
そいつがどうした」
澤村
「昨日、そいつがウチの学校に来たんだ
放課後の、丁度部活が始まる寸前に
その時の津田の顔が、気になってよ……」
俺はまた次の言葉を待った
澤村
「凄く険しい顔してた
今まで見たことないくらい」
黒尾
「………研磨に聞いてみる
その、水落ってやつ」
「まだ起きてるんですか?」
俺達の頭上から、声が降ってきた
振り返るとそこには――
葵
「早く寝ないと明日辛いですよ?
クロも」
室内の明かりに照らされて、ニコリと笑う
葵がいた