第46章 デンジャラス アウェイ
体育館に居た子達を誘って4対4のバレー試合
ネットはさっきより幾分低いが、お母さんのお姉さん達がこのコートの上で数分前まで駆け回っていたと思うと、高揚感が抑えきれなかった
高い天井
コートから見上げれば傍観席から仰ぐよりももっと高い
どれだけ力いっぱいボールを投げ飛ばしてもあの天井には届きそうにない
若
「早くやろう」
葵
「うん!」
お母さん達はコート外のベンチに腰を下ろして笑い合っていた
私達も楽しくて楽しくて沢山笑った
若はバレーが上手だって思った
レシーブが上手、アタックも上手
私は、余計に熱くなった
けど、体は重たい
肺は酸素をくれと悲鳴をあげ、私は咳が酷くなる
心臓がぎゅっと掴まれたみたいに痛い
そして結果は負けた
一緒に遊んだ子達は帰り、コートの上には若と私ただ2人
肩で息をし膝に手をつく私
コートは夕日で朱い
若が側で立つ
私を見ている
葵
「若、強いね……!
楽し……かった!」
息絶え絶えになりながらも言った
若
「俺も楽しかった
けど葵、お前はバレーをやめろ」
葵
「………え?」
若の言った言葉が理解できなかった
いや、正確には受け止められなかった
若の言葉が黒いもので包まれて、私の心に直接入り込んでくる
それがずっとそこに居座っている
「じゃあ」と言って彼は帰った
私は1人コートの上で立ち尽くした
どうしてそんなこと言うの?
私が負けたから?弱いから?
それとも"体が悪い"から?
ねえ、教えてよ
私、今まで負けてもそんなこと言われたことないんだよ
だから、わかんないよ
もしも、私からバレーをとったら
私は何をすればいいかわかんないよ
ポタ………ポタ…………
流れる雫は頬をつたいコートに堕ちた