第45章 To Next Stage→
誰も居ない部屋に「ただいま」と言って、私は自分の家に帰ってきた
空間が私の声を吸い込んでいく
こんな時、誰も居ないのは虚しい
せめて、何かあればいいのに
リビングにはバレーボールが転がっている
私は、肩にかけている荷物をドサリと落ちたことも気づかないくらい無心になって、ジッとそれを見つめていた
色のない、まっしろなバレーボール
小さい頃にお小遣いを貯めて買ったボール
思い出の詰まっている、ボール
こんな面積に入りきれないくらい、これには沢山の思い出が詰め込まれている
立ち尽くしたまま、眺めていると目頭が熱くなって次第にポタ、ポタと目から零れ落ちていく涙
私のどこが、強いんだ――
落としちゃいけない、繋がなきゃいけなかったボールを繋げなかった
触れたのに、あげられなかった
なにが、勝とうだよ――
結局、自分のせいで負けちゃったじゃんか
ポタ、ポタ、ポタタ
涙がボールをぬらす
『勝つためには強さがいる』
私は強くなかった
だから、負けた
ううん、違う
チームを負かしたんだ――
涙が落ちるたびに、心が黒く穴がポックリポックリと開いていくみたいだ
葵
「どうせ、どうせ……………
私なんか、私なんかっ!!!!!
うあああああああん!
ひっ、ふ、ぐっ うっうぅ……
うああああ!」
「やめろ!」
手を誰かに止められる
葵
「……………うぅ、キャプ………テン?」