第44章 ファイナルセット
主治医
「こんの、バカ!
なんであんな無茶を……!自分の状況分かってるのか!?ちゃんと!!」
葵
「………無茶してない」
主治医
「ウソつけ
試合中、咳を出していただろうが
命に関わるんだぞ!?どうしてもっと自覚しない!」
葵
「してるよ!!してるからバレーしてるじゃない!!」
主治医
「なぜそんなにバレーに執着する!?」
葵
「証明したいからだよ!!!
言い方悪いかもしれないけど……、私みたいな欠陥品でも!ちゃんと"価値ある人間"として証明したいから!!
だから!………だから、私は大好きなバレーで認めてもらいたいの………」
主治医
「…………
今日の試合、凄かった
今までの、どの試合よりも
キミは生き生きしていて、楽しんでいるようだった
だけど、頼むからあそこまで無茶はしないでくれ……
私にだって、君を生かせる義務がある」
葵
「……………」
主治医
「明日、病院に来るように
ラスト、胸を打ち付けただろう?
本当は今すぐ見たいが、君も休みたいだろう」
葵
「わかった」
主治医
「じゃあ、私はこれで」
主治医の背中が小さくなっていく
私はひとり、まだその物陰に佇んでいた
ズルリと壁に背をたれてそそのまま三角座りをする
顔を埋める
葵
「ッ、ッく…………うぅ、勝ち…た、かった……
ッッ、勝ち たかったよッ ーーーーッつっ グスッ」
繋心
「…………」