第31章 只今入院中
葵
「菅原さんなら、会ったときから
この人なら話してもいいなって
思いました」
菅原さんは目を見開く
葵
「小さい私でも、ちゃんと気づいてくれましたし、頼ってくれました……
そんなの、初めてで……
菅原さんなら、バレてもいいなんて思いました」ニコッ
菅原さん
「津田、俺、言わないから」
葵
「?」
菅原さん
「俺が弱音吐いても、大地に黙っててくれたように
俺も、お前の事黙ってるから
だから、なんかあったときはちゃんといってくれよ?
さっき名前上げたやつが知ってるんだな」
葵
「……………はい
ありがとう、ございます…!!」
ポフっと、菅原さんが私の頭に手をのせた
そして、
菅原さん
「絶対戻ってこいよ!」ニッ
と笑って、帰っていった
シーン
と静まり返る病室
私は、菅原さんの言葉を思い出して
泣くのをこらえて、溜まっていた涙を静かに流した
嬉しかった
そんなふうに言ってくれて
そんなふうに思ってくれて
ありがとう
ありがとう
静かに、布団に埋もれながら泣いた
ドアの向こうでは、それを静かに聞いていた主治医がいた
何度も入退院を繰り返しても、決してネガティブにならず、前向きに
笑顔を絶やさなかった彼女
きっと、心の奥では
闘っているんだな
自分自身と
葛藤してるんだな
気持ちを押し殺して、せめて身内だけでも、私達にも
心配させないように
不安にさせないように
子供は、大人よりも
強いのかもしれないな