第1章 大切な宝物
ポン…ポン… ポン…ポン…
一定のリズムで背中を軽く叩かれる。
たまに出るシャックリに体をビクつかせながら、視界いっぱいに広がる父の胸板を見ていた。
先程とは違い、部屋を暖める暖炉が着いたこの部屋はうっすらとオレンジ色に見えた。
もう、怖くない。
真っ暗じゃないし、暖かいし…それに、父がいるからだ。
抱き締められているので父の顔は見えない。
でも、背中を優しく叩かれている事から、まだ起きている事は解る。
父を呼んだ。
泣き叫んだ後だからか、私の声は少し枯れているみたいで聞こえ辛かったと思う。
それでも直ぐに反応は返ってきた。
私の額の髪を梳かす様にしながら、顔を見せてくれた父は「落ち着いたか?」と背中の手を休める事なく聞いてきた。
「う、ん」とシャックリと重なった返事をすれば、安心した表情のあとに険しい顔をした。
そして、私をぎゅっと抱き締めて一言…「ごめんな」と。
その父の声を聞いたら、また泣きそうになってしまって…否定の為に首を左右に振る事で精一杯だった。
「パパは悪くない」何故か言葉に出来ないそれが伝わる様に、何度も首を左右に振った。
「起きたらママに会いにいこうな」
背中から頭に移動し撫でてくれる父の手を感じながら、微睡んでいた時に頭上から聞こえた声。
それに返事代わりに頷きながら、睡魔に誘われるままに眠りについた。
頭の片隅で父はなんだかとっても凄いなと思いながら…
その日みた夢は、ファンシーなオバケを父が殴る蹴るで倒していくなんとも爽快な夢だった…気がする。