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コウモリと黒ウサギ

第3章 私の弟を紹介します


「あのね、ユメなの!」

「夢?」

そう、私が弟を大きく描いたのは昨夜見た夢を大きく反映させた結果なのだ。

「セブすごく大きかったの!パパみたいに!」

一瞬見ただけで直ぐに目が覚めてしまったけれど、確かにあれは弟だった。
振り返り首を傾げた私に笑ったその顔は少年というより青年といった感じだったし、身長も高くてゆったりとした雰囲気を纏っていた。

「じゃあ、セブは大人になったらきっと凄く格好良いわね。パパ似だもの」

両手を使って大きさを表す私を見た母は少し驚いた表情をしたけれど、すぐに笑顔で父の顔をみる。

母の視線に照れたような表情をする父を見た私も同意する為に首を縦に振った。
確かに夢の中の弟は父に似て整った顔をしていた様に思うし、微笑みはとても温かかったから。

けれど、父は恥ずかしさから自分から話題を変えようと絵に視線を戻し新たな疑問を投げかけてきた。

「ファブはどうだったんだ?小っちゃいままか?」

言われてみれば不思議な部分ではある。
絵に描かれた私は子供のままだが実際に夢の中の私はどうだったのだろう?と、父の言葉に私は思い出そうと唸りながら考えた。
私の視点で見た夢の世界の為、鏡などがない限り私は自分の姿を確認することが出来ないのだ。
どこかで自分の姿は見なかっただろうか…と考える。

そういえば…父と母を見上げていた私の目線の高さはいつもと同じ場所にあった気がする。
という事は、つまり…

「小さかった…」

周りはみんな大人なのに自分だけ子供のままなで、置いて行かれたみたいで寂しいと思った。
そんな私の頬にキスをして父は言う。

「ファブはきっと凄く美人だぞ!ママにそっくりだからな」

照れる母の頬にもキスをして立ち上がると父は部屋を出て行き、すぐに戻って来た。
父が手にを持った本に気づき母は慌てたが、父はそれを気にする事無くテーブルに置き

「ファブもママみたいに大きくなれるよ」

私の気持ちを察したのだろうか…優しく声をかけて父はゆっくりと本を開く。

そこには、黒曜の瞳と金髪の若い父と私と同じ深緑の瞳と黒髪の若い母が写っていた。
大人になった時に私も母のように大きくなっているのだろうか?…頭一つ分程の身長差がある若い頃の2人を私は時間も忘れて見続けた。



その日の夜、私はまた夢をみるーー
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