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コウモリと黒ウサギ

第3章 私の弟を紹介します


午後6時54分、ダイニングで夕食をとっていた私は両親の会話に耳を傾けながら黙々と口の中に存在するパンを噛んでいた。

既に食後の紅茶でゆったりと過ごしている父と離乳食を弟へ食べさせながら話す母は「そういえばファブが…」と話題を変えて、急に自分の名前が出てきた事に驚いた私は、まだ大きかったジャガイモをそのまま飲み込んでしまい涙目になりながら母を見た。

「今日、私たちの絵を描いてくれたのよ。ね、ファブ?」

「うん!パパとママとセブと私なの!!見せてあげるね!!」

「わかった、わかった!食べてからな」

テーブルに手をついて身を大きく乗り出す私の頭を笑いながらガシガシと少し乱暴に撫でた父は、私が元気よく返事をすると満足そうに頷き紅茶を口にした。



「おー上手だなー」

ダイニングのソファの上、父の膝に座る私の前に広げられた家族を描いた紙。

「これがパパだな。んで、これがママ。これは…セブ…か?」

「うん!」

描かれた人物1人1人を指さしながら言い当てていく父の指が止まる。
両親の間となるそこは本来ならば昼間の事件により裂けてしまい見る事の出来なかった場所だった。
けれど、母の手によって元通りとなったその紙には弟の姿がきちんと確認できる様になっていた。

「セブルスは随分大きいんだな?」

「そうでしょう?私も何故なのか気になってたのよ」

描かれた弟を見て首を傾げる父と、弟の食事が終わり丁度ダイニングへと入って来た母は弟の背をトントンと叩きつつ、父の肩越しに絵を覗き込んで言った。

両親の視線の先には、母を通り越して父と同じ位置に肩を並べる弟の絵が描かれている。
子供の描く絵に身長などの概念は無いとも思うけれど、その隣に描かれた私自身の絵は母と比べると半分程のサイズであったし、それを描いた私もそうなる様に描いたのだから両親の反応は嬉しい限りだった。

私の嬉しさで緩む表情で意図的だと結論付けた両親は興味津々といった感じで、父が横に私を座らせ母はその隣に腰を下ろすと2人同時に「なんで?」と問いかけ私の返答を待つ体勢をとった。

私はシンクロする2人の動きが面白くて声を出して笑い、一呼吸置いて逸る気持ちを抑えてから口を開いた。
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