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コウモリと黒ウサギ

第2章 姉と弟


両親が嬉しそうに書類へと弟の名前を書き込む姿を見ていた。

母の綺麗な字で書かれた『Severus』の文字を見た時ぽかぽかとした気持ちになれたのをよく覚えている。

書き終わった書類を大事そうに封筒に入れて玄関横の飾り棚に置きに行った父はそのままお風呂にお湯を貯めに行ったようだ。
母もすっかり冷えてしまった紅茶と私のココアを新しくいれにキッチンへと向かいリビングには私と弟だけ。

弟が生まれてから定位置となったこの場所に座って、いつもの様に弟を覗き込めば、先程と変わる事無く私を見つめる大きな瞳があった。

「セブル、ス…」

2回目となる弟の名前は言い慣れなくて少し格好悪い響きとなって私の鼓膜を震わせた。
それでも、それに反応したみたい見えるタイミングで腕を伸ばす弟が可愛く思えた。

伸ばされた手に触れれば上手に私の指を握り込む小さな掌。

「好きなの…?」

私の事ーーーー母が言ってたの。
あなたは私のことが好きなんだって…それって本当?
だって…だって、私…あなたの事…

口には出さなかったその言葉を肯定する様にキュッと力の入れられる掌に目頭が熱くなった。


「ごめんね」


今までお姉ちゃんらしい事してあげなくて…


嫌いだなんて思ってーーごめんなさい


小さな掌を両手で包んで視界を遮ろうとする涙を零さぬ様に瞬きを我慢した。
また、この子が泣いてしまわないように…
一緒に感じる事ならば、悲しみや涙なんかじゃなくて楽しみや笑顔を感じたい。


良いお姉ちゃんになるから


私もあなたの事が大好きだよ


「よろしくね」

笑顔で言った私の言葉に弟も笑ってくれた。

嬉しくなって父が私にする様に頬ずりをすると弟は笑い声をあげて喜んだ。

その声にバタバタと両親が集まり吃驚したのだが、どうやら弟が笑い声をあげるのは初めてらしく…それを聞いた私は自慢したい気持ちになって「私だから笑ったの!」と何度も声を大にして言っていた。

それが両親を若干落ち込ませた。
というのは、また別の話であるーー。
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