第1章 降って湧いた妖精?
ふと、テーブルの上に目が止まった。
「レン…?これナニ?」
小さなテーブルの上には古い茶色の箱。
だいぶホコリをかぶっている。
「ああ、荷物整理してたら出てきたんだ。多分母さんのだと思うよ」
へぇ、と言いつつ遠慮なく箱を開けた。
母は勝手に開けても怒れる立場にいない。
なにせ海外。されど海外。娘と息子を放っておいて何年も海外。怪しい箱を開けたくらいじゃ怒られないだろう。
食事の支度をしていた蓮がその時、思い出したかのように振り返る。
「あぁ、そういえばその箱開かないよ?何度も試したけど…」
へ?
普通に開いたけど。
「やだ、握力落ちたんじゃない?普通に開いたよ?」
「いや、おかしいよ!……確かに握力落ちたかも知れないけど、尋常じゃないくらい固かったよ!!」
そんな馬鹿な。
そう思った時、薄く開いた箱の中から、赤い閃光が漏れだした。
血をも連想させる暁色の世界が、広がった気がした。