第8章 strategie⑧
川崎が厳しい目で監視してくるので、しょうがなくご飯を食べることにした。
食べ始める俺を見て川崎は安心したように椅子に座って一息ついていた。
「光一さん、あのニュース以降ドラマの視聴率が急上昇しているみたいですよ。」
「そうなん?」
「はい。ニューアルバムの予約もすごいみたいで。皮肉な話しですけど…。」
川崎は苦笑いをする。
「そうやな。ほんまおかしな業界やな。」
「そうですね。」
そこで俺はまた日課のように、同じ質問を川崎にぶつけることにした。
「ヒロカと連絡とりたいねんけど。」
リラックスしていた川崎だったが、ピシリと緊張感が走り、やっぱりあかんかと俺は思う。
「無理ですね。」
「どうにかならへんの?」
「僕のチカラでは不可能です。」
ニュースになった日、俺はすぐにヒロカに電話やメールをしたが、繋がらずメールも戻って来てしまったのだ。
うちの事務所はなんだってやる。
タレントの知らない場所でも、公けには言えないようなことをそのチカラで成し遂げてしまうのがうちの事務所だ。
ヒロカの携帯を変えさせることなんか簡単なはずだ。
これで彼女との連絡は途絶えた。
唯一の頼みの綱である川崎に毎日頼み込んでいるが、頑なに動こうとはしてくれない。