第7章 strategie⑦
俺は何度か携帯を確認したが、ヒロカからの返信がなかったので、今日は諦めようと眠ることにする。
俺はその日妙な夢を見た。
俺はクルマの運転をしている。
風が気持ち良くて絶好の運転日和。
お気に入りの真っ赤なフェラーリは洗車したばかりで気分は最高。
隣にはヒロカがニコニコ笑ってる。
真っ赤な口紅引いて、サングラスなんかかけて超イカした女だ。
もっともっと気分は上がってグッとアクセルを踏んだ。
ここはどこかと眺めると、標識が英語だった。
アメリカなのか。
ヒロカはホットドッグを頬張りながら右手に赤ん坊を抱いている。
俺の子なのか。
もうこの状況わけ分からないが、なんか幸せなことは確かだった。
バックミラーを除くと、たくさんのクルマが後ろにいた。
前には一台も車がいないのに。
つまり俺は追いかけられているのか?
不安気にヒロカの方を向くと、ほっぺたにケチャップをつけたままニコっと笑った。
二人だったら大丈夫。
逃げ続ければ良いのよ。
そう言ったので、俺は安心して音楽のボリュームMAXにして爆音で流しながら、アクセル全開で車を吹っ飛ばした。
ヒロカは爆笑しながら、最高!と叫んだ。
めちゃくちゃだ。
めちゃくちゃで、ハチャメチャで気持ちが良い。
全ての束縛から解放されて本当の自由がここにあるんだと思った。
ヒロカがいて、俺とヒロカの子供がいて、大好きなフェラーリに乗って。
それだけで良いんだ。
無駄なもの全部そぎ落としたら俺にはそれだけが欲しいんだ。
俺は幸福感の絶頂を味わってクルマのメーターがぶっ壊れる程スピードをあげて走ったら、その先は崖だった。
車はそのまま真っ逆さまに落ちていった。
後悔も迷いもなく、俺らを乗せた車は崖の先のブラックホールに消えていった。
そこで俺は目が覚めた。