第7章 strategie⑦
「光ちゃん。分かったよ。別れてあげる。」
しばらくしてそう冷たい声で静かに言われる。
俺はほっとして、ため息を一つした。
「でも一つだけ覚えておいてね。わたしと別れたこと絶対に後悔させてやるから。わたしのこと舐めちゃだめだからね。」
その重々しい声に一瞬身震いをした。
女は怖い。
男よりずっと頭が良いのでなに仕出かすか分からない。
しかしそれでも良かった。ヒロカを不安にさせるものが一つでもあることがいやなのだ。
ヒロカがウチにいた数日間、彼女の気持ちが少しでも俺に傾いていることが分かった。
せっかく気を許してくれかけたのに、アンリのせいで不信感を抱かせるわけにはいかない。
俺は彼氏でもなんでもない存在だったが、そこまで彼女に捧げていた。
バカなやつと笑われてもいい。
それでヒロカが手に入るのならお安い御用だ。
早く誤解を解かなければと思い、家に帰ることにする。