第7章 strategie⑦
「今の人愛してるの?」
「は?」
「ねえ、答えて。今の人のこと光ちゃんは愛してるの?」
アンリがどんな意図で質問したか分からず、回答にこまったが、ここはハッキリ言わないとこの先ずっとアンリに縛られたままだと思い、本音で答えることにする。
「あぁ。愛してるよ。あいつのこと。でもお前のことはなんとも思ってへん。だからお前とは付き合えない。分かってくれ。」
すると、アンリはフッと子供みたいにいたずらな目をして笑った。
「光ちゃん趣味変わったね。」
「は?」
「B専だったっけ?光ちゃん。」
「…は?お前何言うとるの?」
「言っとくけど、今の人と光ちゃん全然釣り合ってないよ。光ちゃんはボランティアみたいで楽しいだろうけど、今の人は見てて哀れというかなんか可哀想。」
本当に楽しそうにケラケラと笑っている。
頭の中でプチンと何かがキレる音がしたのが分かった。
理性なんてどこかに吹っ飛んでしまう。
俺はアンリの胸ぐらを思っ切り掴んだ。
「てめー殺すぞ。」
するとアンリは少しびっくりしていたが、その後彼女も何かがキレたのかワッと泣き叫んだ。
「別れたいとか言われてるのわたしなんだよ?!!わたしが一番の被害者なんだよ?!!!なんでわたしがこんなに責められなきゃいけないの?!!!!なんでわたしばっかりこんな目に合わなきゃいけないの?!!」
街中ということを忘れて彼女はワンワン泣き出した。
アンリは子供だ。
自分のことしか考えられなくて、相手の立場になって物事を考えるという概念がない。
世界の中心は自分だと思っている。
小学生のまま精神年齢がとまってしまったのか。
そんな風に泣き叫ぶ彼女を冷めた目でじっと見ていた。