第7章 strategie⑦
〝離してよ〟
彼女の言葉が頭の中でこだまして離れてくれない。
カフェでアンリに別れ話をしていた時、ふと窓の外を見ると、ヒロカが無表情でこちらを見ていた。
俺はなにか誤解したのではないかと思って急いで店を出て彼女を思いっきり抱き寄せた。
しかし傷ついたような表情をしていたヒロカは俺の目を見てくれなかった。
代わりに氷のように冷たい声で
〝離してよ〟
と叫んだ。
俺は一瞬なにが起きたのか分からず、その場に立ちつくしてしまう。
彼女は俺の手をスルリとかわし逃げ去ってしまった。
その場にしばらく立ちつくしていると、後ろにアンリがいたらしく「光ちゃん」と呼ばれる。
振り向くとアンリは顔を真っ赤にして少し震えながらこちらを見ていた。
「今の誰?」
「お前には関係ないやろ。」
「関係あるよ。わたし光ちゃんの彼女だもん。」
俺は思いっきり分かり易くため息をつく。
「だから今その話ししたやろ。お前とは付き合えないって。」
アンリはしばらく下を向いて黙っていたが、突然上目遣いでキッと俺を睨みつけた。
あまりに鋭いアンリの目に一瞬たじろいでしまう。