第6章 strategie⑥
すると、ポケットに入っていた携帯が鳴った。
ポケットから出すと、タクヤからのメールだった。
「電話下さい。」
わたしは、息を思いっきり吸って彼の番号に電話する。
もうどうなってもいい。
わたしの人生なんてめちゃくちゃになればいい。
もともとめちゃくちゃなんだから。
怖がって、立ち止まってモヤモヤしていたってどうしようもないんだ。
なるようにしかならないんだから。
そう意を決して携帯を耳に当てた。
その手は震えていた。
「もしもし」
タクヤの声が聞こえる。
声だけじゃ感情が読み取れない。
「もしもし。連絡してなくてごめんね。」
「いいよ。っで、これからどうするんだよ。」
わたしは頭の中でいろんな言葉を探し組み立てるが、ぐちゃぐちゃしていてうまい言葉が見つからなかった。
「ごめんなさい。好きな人ができました。」
そう初めて自分で言葉にして伝えたら、すごくすごくバカみたいな気持ちになる。
こんなに悩んでたのに、たったこれだけのことだったのかと思った。
「そっか。それでどうすんの?」
「タクヤとは別れたいです。ごめんなさい。」
「勝手だよ。」
タクヤは冷たく静かにそう言い放った。
「ごめんなさい。でもどうしようもないの。」
「俺お前の父親の借金全部肩代わりしたんだよ?」
「その分のお金はタクヤに少しずつ返すから。」
「女優どうするんだよ。やりながら返せる訳ないだろ。」
「やめるよ。風俗戻る。」
「ヒロカは本当に馬鹿だな。あと先考えないで。無理に決まってるだろ。風俗で働ける寿命あと何年だよ。」
そう電話越しに鼻で笑った。
やるせない気持ちになる。
「なんとかする。だってタクヤがいなかったらそもそもどうにかしなきゃいけなかったんだから。毎月ちゃんと決まった分払う。」
「腹くくってんのか?」
「うん。」
「女優やめてまでそいつが好きなんだな。」
「そうだよ。」
わたしの頬を一粒の涙が流れた。
自分の運命を呪っても仕方がないことだと分かっていながら、わたしは猛烈に悲しい気持ちになる。