第6章 strategie⑥
近所のコンビニでキャスターマイルドをカートンで買った。なんとなく誰もいない部屋に戻りたくなくて、わたしはブラブラと歩きならがら駅の方へ向かう。
舞台も終わってドラマの撮影も終わって、そろそろアルバイトを始めないといけない時期であった。
しかしもともとやっていたカラオケのバイトにシフトを出すのが億劫で出していない。
だいたい風俗で働いてたわたしが今更普通のバイトなんか馬鹿らしくてやってられない。
しかし、タクヤと結婚してからは普通のバイトをせざるおえなかった。
今は光一と少しでも離れるのが怖くてわたしは貼りつくように彼の家にずっといるだけ。
芝居の仕事も、バイトもせずに、旦那のところから逃げ出して、憧れの芸能人の家に入り浸っているわたしはただのダメ女だ。
買ったばかりのタバコを袋から出して、歩きながら火をつける。
煙がゆらゆらと無軌道にチカラなく流れていくのを見ながら、自分の無気力さと重ねていた。
しばらく歩いていると、雑貨屋やカフェのある通りに出た。
駅のまわりにはデパートやら大きなビルがたくさんあるが、少し外れたところには気の利いた小さな店が多く立ち並んでいる。
わたしはその店をぼんやり見ながらトボトボと歩いていく。
家の近くなら良いが、この辺になってくると流石にすっぴんにボサボサの髪で歩くのは恥ずかしさが出てくるが、わたしは歩くのをやめなかった。
割とどうでもよくなっていたのだ。