第5章 strategie⑤
彼女の冷たい声にぞっとした。
「あほか。何言うとんねん。」
「冗談じゃないよ。お願い。そしたら別れるから。」
こいつは本当にあほだ。
昔だったらそんな馬鹿げた発言も鼻で笑って過ごしただろう。
しかし笑えなかった。
もしかしたらいつか俺もこんな風になってしまう。
いや、
すでにこれ以上になっている。
ヒロカを脅してまで必死に繋ぎ止めようとしている。
背中がすっと冷たくなった。
「分かった。明後日の昼は?」
そういうとまた電話口で泣きはじめた。
「ごめんなさい。ありがとう。ごめんなさい。」
「またメールする。」
俺は一刻も早く終わらせたくて一方的に電話を切った。
剛が複雑そうな目でこちらをチラリと見た。