第5章 strategie⑤
「間になっていろいろ言われる俺の身にもなれや。お願いだからアンリちゃんとのことケリつけてから、今の恋愛してくれ。」
俺は元カノのことを思い出す。
嫉妬深く、疑り深かった。
俺の行動一つ一つを気にし、携帯を触れば不安そうにこちらを見つめ、少し冷たい言い方をすれば狂ったようにわめいていた。
なんとなく好きだと言われ付き合ったが、彼女の狂気に疲れまた少し恐怖を感じ、俺はなんとなく別れたはずだった。
彼女はまだ俺と付き合っていると思っていたのか。
当時は鬱陶しいだけだったが、彼女の気持ちは今は分かる気がした。
少しだけ可哀想なことをしたと感じる。
「すまんかったな。ちゃんと連絡して別れるわ。」
そういうと剛は納得したように笑った。
「それは良かったわ。」
俺もつられて笑う。
するとおもむろに、携帯を俺に向けた。
「はい。」
「は?」
もう一度携帯を向けてくる。
「はい。」
「は?」
「なにしとんねん。早く連絡せえや。」
「え、、今ですか?」
「当たり前やろ。今しないとお前絶対せえへんもん。」
こいつ。
全てを見透かしすぎやろ。
俺はなにも逆らうことができずに、言われた通りに剛の携帯を借りた。