第1章 strategie
今日の撮影は全て終わったが、興奮状態が収まらなかった。
なんだあいつ。
いろんな大物俳優と共演させてもらってきたが、あんな全身が震えるような感覚は始めてだった。
カメラもスタッフも監督も全て見えなくなってそこには俺と、俺の妹がただいるだけだった。
「光一さん、#中村#さんとお知り合いなんですか?」
「は?」
予想外とも予想内とも言える質問を川崎にされ、驚いてしまった。
やっぱりそう見えたんや。
不思議とそう感じてしまったのだ。
「いや、なんかすごく二人が自然というか、あんな光一さん見たの初めてだったので少し驚いてしまって。」
「え、、、あんなって。」
「んー、言葉で説明するの難しいんですけど、リラックスしてたというか、バリアはってないというか。」
一気に赤面した。
俺はいったいどんな表情をカメラに向けていたのだろうか。
「いつもバリアはってるみたいな言い方すんなよ!笑」
「ははは、すみません。」
俺はこのなんとも言えぬ動揺を隠すために笑いで誤魔化した。
彼女とのシーンは今日撮ったのが最後で、もう会うことはないだろう。
名前なんだったけ。
もう一度あいつと芝居がしたい。
生まれて初めてそんな風に感じてしまった。
「あ、そういえば明日OFFになりました。ゆっくり休んで下さい。」
「は?」
「光一さん休みたがってたでしょう?がんばってつくりました。」
「いやいや、なに言っとんねん!いらんて!」
こんな時期に休んだらツケが回ってくるだけだ。
「ウソですよ!明日予定してたロケ地、イベントがあって撮影明後日になったみたいです。」
「なんやそれ。」