第1章 strategie
目が覚めたらもう昼すぎだった。
突然の休みにはいつも困ってしまう。
結局こんな風に寝ておしまい。
まあ、でもここ最近のひどい疲れも解消されて助かった。
セリフでも覚えるか。
昨日の二の舞は踏みたくない。奇跡的にセリフが出てきたが、ヒヤヒヤする思いはしたくない。疲れるだけだ。
台本をパラパラとめくっているとある名前に気づいた。
ミサキ役
#中村##ヒロカ#
この名前本当に聞いたことないなあー。
俺は何気無くパソコンをひらいて名前を検索した。
パソコンのディスプレイにうつったのは以外なページだった。
下北沢駅前劇場
王子小劇場
吉祥寺シアター
どれも小劇場と呼ばれるハコばかりに出演している女優で、テレビや商業演劇にはほとんど出ていないようだった。
それに事務所にも入っていない。フリーで活動している本当にアマチュアの女優だ。
信じられない。
たった2、3シーンだけの小さな役で少しセリフを交わしただけでこれだけ心に残って俺のアタマから離れようとしないなんて。
きっとこいつ大物になる。
俺は確信した。
そしてワクワクした。こいつがどうやって有名になって、この世界の天下をとるのか。
小さいころからこの業界にいてそこにいるのが当たり前だった。いろんな人がのし上がってきて蹴落として上にいく。
そんな世界で俺はある意味恵まれた環境で自分のことだけで精一杯で他の人に興味を持ったことは一度だってなかった。
その俺が
天下をとるところを見てみたい。
だなんて。