第1章 strategie
あれ?セリフなんだっけ?
急にあたまが真っ白になった。
うわ。
嘘やろ。この感覚ひさびさや。
すっと冷たい汗が滲んだ。
「よーい、はい!!!」
監督の力強い声が飛ぶ。
もう良いや。
テスト終わってからセリフ確認しよう。
俺はやけになって、扉を開けた。
するとさっきの女優(名前忘れたけど。)がこちらを振り返る。
懐かしむような、馴れ馴れしいようなそんな表情をしていた。
怯えた表情は消えていた。
鳥肌が立った。
確かにそこにいたのは俺の妹だったのだ。
「お前、なにしてんの。」
滑るようにセリフが出てきた。
「ごめん。勝手に入って。久しぶり。」
「久しぶりじゃねーよ。ふざけんな。母さんに言ってないだろ。」
「ごめん。」
「謝らなくて良いからとりあえず出てけよ。」
そう言いながらキッチンに行き、水を飲もうと手をかける。
「はい、カット!!!」
すると体の力が一気に抜けた。