第5章 strategie⑤
あの日からちょうど一週間が経った。
ヒロカが泣きながら家に突然来てから。
俺は涙の理由も聞かずに、彼女をずっと家に泊めている。
いや、
無理矢理とどめている。
彼女と愛し合った時の様子を携帯の録音機能で残しておき、それで彼女を脅しているのだ。
堂本光一が、ドラマで共演した人妻の女優と不倫なんて、そんなのが世間に出回ったら、俺もヒロカもメディアの恰好の餌にされる。俺は散々晒し者になって、ヒロカは芸能界から抹消されてしまうだろう。
それくらいのこと、この録音を聞けばヒロカも想像がついたようだ。
俺が録音を彼女に聞かせると、しばらく黙ってそれから
「わたしはどうしたら良いですか?」
とそれだけ言った。
俺が帰って欲しくないと言えば、彼女は帰らない。
俺が求めれば、彼女は服を脱ぐ。
間違っていることと分かっていながら、俺にはこの方法しかなかった。
なんて不器用で愚かなんだろう。
ヒロカには本当に愛し合っている人がいる。
その事実を考えただけで、俺は乱暴にでも彼女を捕らえていたかったのだ。