第5章 strategie⑤
朝目覚めると、トーストと珈琲の良い匂いが寝室まで届いた。
人の動く音が聞こえてホッとする。
今日もヒロカが家にいる。
俺はのそのそと裸のまま布団から出て、ベットの横にかけてあるバスローブを羽織った。
寝室を出ると、ヒロカが振り返り、パッと花が咲いたように笑った。
俺の胸がキュッと締め付けられる。
「おはようございます。朝ごはんつくったんですけど、食べれますか?」
自分でも顔がにやけるのがわかった。
「当たり前やろ。ヒロカがつくったもの食べない訳がないわ。」
ヒロカは少し恥ずかしそうに下を向いて笑った。
なんて幸せなんだろうか。
こんな普通の恋人のような会話をする機会なんて全くなかったのに、大好きなヒロカと当たり前のように話してる。
奇跡に近いかもしれない。
俺は目の前に出されたホットコーヒーの湯気を見ながらそんなことを考えていた。