第4章 strategie④
3回目のコール音で、相手は出た。
「もしもし……」
その落ち着いた声に、ドキっとした。
こんな状況でもわたしは彼に引き込まれる。
「ヒロカか?」
わたしはなにも答えない。
「ヒロカなんやろ?!!」
「………はい。」
蚊のような小さな声で頷く。
「遅いわ!あれから何日経ったと思ってるん?」
「…え…?」
光一はもしかしたら連絡先を渡したことなんてすっかり忘れているかもしれないと思っていたので驚いた。
「…ごめんなさい。」
「今どこにおる?」
わたしは辺りを見回す。泣きながら無意識に歩いていたので、ここがどこだかよく分からなかった。
「家の近く…だと思います。」
「だと思うって…。メールで住所送るからこの間渡したメモのアドレスに空メール送り。タクシー乗って俺のうち来い。」
「分かりました。」
強引な彼にわたしは流されるフリをする。
本当は期待していた。
無理矢理わたしを引き寄せてくれることを。