第4章 strategie④
「タクヤ…まだ風俗行ってるみたいだね。名刺たまたま見ちゃったの。本当好きだよねー。」
わたしも負けじと馬鹿にしたように笑った。
「見たのか?」
「たまたまね。」
タクヤは、はあー、とため息をついた。
なにも言い返せないようだ。
「わたしと結婚したのって、わたしをいつでも自由に抱けるからでしょ?」
タクヤは光のない目でこちらをギロリと向く。
「わたしもお高い女だよね。借金全部支払ってくれちゃって。そんなにわたしの体良かったの?でも飽きちゃったんでしょ。結局風俗行ってるんだもん。馬鹿だね。」
父親はギャンブル狂で、旦那は風俗狂なんて、ほんとにわたしは男に恵まれない。
「わたしは金目当てで、タクヤは体目当てで、わたしたちってほんとに馬鹿な二人だよ。こうやって夫婦ごっこ死ぬまで演じ続けようとしてんだもん。本当馬鹿。」
わたしはまた笑いながら泣いた。
笑いも止まらなくて
同時に涙も止まらない。
そんなわたしをタクヤは哀れむようにじっと見つめ、こう言った。
「じゃあ離婚するか。」
あっさりとした口調にわたしは意表を突かれ、一瞬なにを言われたのか分からなかった。
「え?」
「確かにそうだよ。ヒロカの体はほんとに…最高だった。金に困ってたから、買ったんだ。独り占めできると思って。」
淡々と喋るタクヤにわたしはどんな気持ちでいたら良いかわからなかった。
「ヒロカがこの結婚生活意味ないと思うなら別れるよ。」
「え…?」
タクヤはゆっくりと落ち着いたようすで話し始める。
「初めに言っただろ。役者辞めるなって。俺はお前のファンだって。俺と結婚すれば役者やり続けられると思ったんだ。お前もそのつもりだと思ってた。でもこの関係に意味がないって言われたら、それは一緒にいてもしょうがないよ。」