第1章 strategie
「堂本光一さん入られます」
スタッフの威勢の良い声と共に大勢の人々がこちらに目を向けて拍手する。
俺はカッコ良い芸能人を気取りながら、頭の中で次のシーンのセリフを何度も繰り返していた。
だいたい前日に覚えて朝確認する作業をすれば完璧にあたまに入って現場に入るのだが、今朝不覚ながら寝坊してしまった。
出発ギリギリに起きたせいでセリフの確認ができていない。
昨日の夜覚えたので忘れてなければいいのだけど。
「光一さん、では始めはシーン14、アキラ部屋に入ってくる。から撮ります。」
アキラとは俺の役どころだ。
「スタートがかかって5秒してから部屋に入って下さい。妹役の#中村##ヒロカ#さんがいます。そこでセリフを交わして頂いて、アキラが台所に行ったところでカットをかけます。」
すると後ろの方からこちらを伺うように一人の女性が怯えたようにお辞儀をした。
「今回妹のミサキ役を演じさせていただきます#中村##ヒロカ#です。よろしくお願い致します。」
新人の女優さんのようで見覚えがなかった。
まあ、もしかして有名かもしれないが俺はテレビを見ないからよくわからない。
「それではテストいきます。準備のほうお願いします。」
スタッフに促されて俺は扉の後ろに行く。