第4章 strategie④
家に到着し、扉を開けるとタクヤがテレビを見て待っていた。
「撮影おつかれさま。」
柔らかな笑顔でむかえてくれた。
そんなタクヤにわたしは笑顔で応えることができない。
「うん。ありがとう。」
カバンを置きながらなんとなく返事する。
「テレビの仕事がまた来るなんて凄いね。少し前まで小さな舞台しか出てなかったのに。」
キラキラした目でそう言ってくれているタクヤに少しイライラした。
「全然すごくないよ。次の仕事が決まってる訳じゃないもん。今回たまたま出れたけど、次に繋げられないから意味ないし。」
「分からないじゃん。また呼んでくれるかも知れない。」
光一と自分の落差にわたしは落ち込んでいた。
なにもこの世界のこと分かってないタクヤに、適当に凄いと言われるのが嫌だった。
全然すごくないのに。
わたしなんて。
「そんな甘い世界じゃないよ。」
タクヤは全く関係ないのに、わたしは彼に当たった。
タクヤのこと格好悪いと思った。
光一に見つめられるときはドキドキして高揚している。高揚すればする程、なんでわたしはこんな格好悪い人と結婚しているのだろうと嫌悪してしまう。
最低な女だ。
身の程知らずも甚だしい。
しかし、華やかなものに惹かれるのは自然なことなはずだ。
わたしは自分にそう言い訳した。