第4章 strategie④
撮影が全て終わり、帰り道わたしは考えていた。
なんで光一はあんな連絡先なんて渡したのだろうか。
からかっているのだろうか。
彼の周りには魅力的な人がうじゃうじゃいる。
わたしなんて遊び相手としても足りない程のダメ女なのに。
大スターなのに小劇場の舞台をわざわざ見に来てくれたこと。
連絡先を渡してくれたこと。
わたしに向けてくる笑顔。
熱を帯びた彼の愛撫。
わたしは彼の一つ一つの行動を思い返しては舞い上がりそうになるが、思い上がるのはヤメよう。と釘をさす。
だいたいもし光一がわたしに好意を示していたとして、何なのだろうか。
わたしには夫がいる。
彼といくら時間を共有して絆を深めたところで意味がない。
未来がないのだから。
もう考えるのはヤメよう。
大スターに現を抜かすのは。
現実を見よう。
結局傷ついて後悔するのは自分なんだから。