第3章 strategie③
「なんや他人行儀やなー。この間の忘れたんか?」
そう言うと、彼女の顔が一気に赤くなった。
「あの、いえ。」
ヒロカは必死に顔を隠すように下を向く。
その表情を見て俺はスイッチが入った。
「なんや、聞こえとるん?」
絶対に目を合わせようとせずにごもごもとどもっている。
「いや、えっ…はい。」
「んー?なんてー?分からんわー。」
俺ははっきりしない彼女に迫るように近づいた。そうすると、一歩一歩下がっていってしまうので、楽屋の壁まで追い込んだ。そして両手を壁につけて逃げないように囲い込む。
ヒロカの顔はどんどん赤くなっていくのが分かり、同時に俺のテンションが上がっていった。
くそ。
なんでこんな可愛いんだ。
「あの…やめて下さい…。」
ヒロカはそう可愛い声で小さく言う。
「なんや、その言い方。逆の意味に聞こえるんやけど。」
「え?!!違いますよっ!!!」
そう言うと彼女は顔をあげて、初めて目があった。
「ヒロカ…。」
ヒロカは俺の視線から逃げられず、じっとこちらを見ていた。
逃がさへんよ。
絶対に。
「ヒロカ…、可愛いいな。」
そう低い声で耳元で囁くと、ビクリと身体を震わせた。
「そんなこと…ない…です。」