第2章 strategi②
──5年前
わたしはまだ19歳だった。
世の中こと少しも見えていない子ども。
借金まみれでギャンブル狂の父親と、田んぼしかない田舎を捨ててわたしは東京に逃げてきた。
女優になりたいなんて恥ずかしくて誰にも理由を告げずに、夜逃げ同然で家を飛び出したのだ。
なんの計画もお金もない状態のわたしでさえも、生かしてくれるのが東京だった。
家がない状態でも24時間マクドナルドが空いていて時間を潰せるし、漫画喫茶でだって寝れる。
最初の方はそれで過ごしていたが体力的にも限界で、
借金をして家を借りてバイトをしながらやりくりしていたが、舞台の稽古が始まるとバイトになかなか出られず借金が増えた。
舞台といってもわたしのような経験もお金もないわたしに出されるギャラは雀の涙ほどだった。
コンビニのバイトをやめてキャバクラで働くようになった。稽古が終わると毎晩お酒を飲まされ声がガラガラになった。
キャバクラに移ってからはだいぶ生活が楽になったが、ギャンブル狂の夫をもつ母親からお金を貸して欲しいと言われ断られず渡していたので、生活が苦しいことは変わりなかった。母親のことは好きで地元でも唯一母親だけには連絡先を教えていたのだ。
わたしは舞台をやる更に借金を増やしていたので、キャバクラを辞めて風俗に移った。
知らない男の人に抱かれるの怖くて最初はお触りパブだったが、慣れてくるとピンサロ、そして最終的にデリヘル嬢となった。
デリで働くようになってからわたしの生活は一変した。
いままでわたしを苦しめていた借金はたった半年で全部返済した。
着る服も良いものを着るようになり、生活に余裕があった。
デリをやっていた時出会ったのがタクヤだった。