第2章 strategi②
わたしは全速力で走りながら、何度も何度も同じセリフがあたまをよぎる。
「幸せでした。」
何気なくわたしが言った一言。
「幸せやったんか?」
子供のようなピュアな瞳で真っ直ぐ問う彼の一言。
幸せ。
もう考えないようにしていたその感覚。
幸せなんか追うのは諦めていた。
わたしはもう決めたのだ。
今の彼と共に生きるということを。
しかし
突然前置きなしに降りかかってきてしまった「幸せ」への渇望。
もし
もしも
わたしは自分の幸せだけを考えて突っ走ることが出来たとしたら、わたしは今きた道を引き返して、光一の胸にもう一度飛び込むだろう。
そうしてこういうんだ。
「こんな幸福はじめて」
だって。
わたしは走りながら、息をきらしながら一筋の涙を流した。
もうわたしは後戻りできない。
少女のように甘い夢ばかり見ていられない。
現実に生き、戦わなければいけないのだ。
わたしはボロアパートに辿りついて、ゆっくり鍵をさした。