第8章 strategie⑧
タミコはそれから、クスリにハマっていった。
客の中に密売人がいて、クスリを打ちながらのセックスにタミコと密売人で溺れていく。
タミコは生活のためから、クスリのために仕事をするようになっていった。
どんどん痩せ細っていき、変わっていく彼女を見て、店長はタミコを抱かなくなった。
そして商売道具として使えなくなったタミコを店長は捨てた。
目は虚ろで舌も回らないタミコは別人になっていく。
胸のドキドキがとまらなかった。
見たことないヒロカの表情に鳥肌が立ち、狂っていく彼女を見たくないと思う反面、ずっと見ていたいという興味本位的感情が生まれる。
この客席にいるもの全員が共犯者になった。
ただ一人の不幸な女の人生をめちゃくちゃにしながらも、好奇の目線は誰も外そうとはしなかった。
俺もその一人だ。
こんなにもボロボロで人間とは思えない人格に変貌した哀れな彼女を、誰も手を差し伸べようともせず、ただただ堕ちていくのを見ているだけ。
もっと
もっと
もっと
もっと不幸になれ
もっと汚くなれ
もっと堕ちて行け
そう心のどこかで感じている。
彼女はその小さな体で必死に応えた。
クスリが切れて、床をのたうちまわり、自分の体を引っ掻きまわし、人を騙して懇願してクスリを貰い、また負の連鎖に絡まっていく。
そして
彼女は最後ホテルで密売人を待っていたが、裏切られて自殺をする。
タミコは人生の幕を下ろした。
タミコ演じるヒロカは最後自殺する前に、客席の方を強く睨んだ。
「こんなはずじゃなかった。みんなもそう思ってるんでしょ?」
そう言ってナイフで頚動脈を引っ掻く。