第2章 伸ばした手が触れる残像。
アイツと俺は付き合ってない。
ただ一方的に俺が好きなだけだ。
その事はアイツも知っている…。
『好き、なんだけど…』
『え。…誰が?』
『…だからお前が…』
気持ちを伝えた時のあの鳩が豆鉄砲を食らったように間抜けなアイツの顔を思い出して、くすっと笑みが溢れた。
アイツはもちろんホモじゃないし、付き合ったりはしなかった。
ただアイツは俺を避けたりすることは一切無く、今まで通りに接してくれていた。
それが辛い時もあったけど、あからさまに避けられるよりはずっとマシだった。
俺もそれ以降、“好き”だとは伝えてない。
好きだったけど、それはそれで割り切ったのだ。
せっかくアイツが普段通りに接してくれていたのだからー…。