第2章 伸ばした手が触れる残像。
一瞬こちらを振り向いて見せた顔。
その顔にははっきりと引き止めて欲しいと言う彼女の思いが浮かんでいた。
「……はぁ…」
泣いてたな…。
俺を見て引き止める気がサラサラないことに気づいた彼女の、目に一杯の涙を浮かべた姿。
脳裏に焼き付いてしまった顔を振り払って、俺はベッドに倒れこんだ。
…一ヶ月ももったんだな…。
別に好きでも無かった彼女と付き合って早一ヶ月。
…されど一ヶ月。
アイツはいつ戻ってくるのだろう…。
「会いたい…」
それは先程の彼女に宛てた言葉では無く、数年前に姿を消した幼馴染に宛てた言葉。
しんと静まり返った部屋に響く俺の声は酷く虚しいものだった。