第1章 雨降りて想う君。
細く長い男とは思えない程に繊細な指先に何度触れたいと思ったことか…。
たまに俺の頭を撫でてくれるその手の体温に何度ときめいたことか…。
今ではその手も体温もあの子のモノになってしまって…。
俺の元に残ったモノは何一つ無い。
この想いを留めておけば、きっとアイツと俺は今でも“親友”だったんだー…。
でも…それじゃあもう足りなかったんだよ。
好きすぎて苦しいんだ。
目が合うだけで壊れそうな程に高鳴る胸の鼓動。
…だんだんと欲張りになって…。
「…ふっ、あぁ……」
気持ちを伝えた代償は余りにも大きかったが、俺の頬を流れていく涙もやがて枯れ、きっと潤った地面が励ましてくれるだろう。
それまでは君を想い涙を流す事を許してくれ。
空が晴れ、虹が浮かび上がったころにきっと俺も前を向き上を見上げることだろう。
頬に涙の跡を残したまま、俺の口元は微笑みそして…ため息を一つ……。
「…愛してた。」
【END】