第3章 溢れる恋、腐敗して。
「俺は…んー、そうですねー」
顎に長く綺麗な細い指先を当てて考える後輩の横顔は、校内1と噂されるくらい整っている。
なあ理玖、知ってる?
俺はそんなお前と手を繋ぎたいとか、抱きしめたいとか、キスしたい…とか、そんなこと考えてるんだぜ?
到底俺の気持ちになんか気付かないだろう後輩は、お弁当の中にあるエビフライをひょいと摘み上げるとはい、と差し出してきた。
俺は口元に持ってこられたそれをパクッと遠慮なく食べる。
理玖は俺がエビフライが好きだと知ってから毎回お弁当に入っていると、何も聞かずに食べさせてくれる。
「いつも先輩と一緒にいるから、彼女が欲しいとか思ったことないです」
そう言ってニコリと笑う後輩。
なあ…それ、ただの告白じゃねぇか。
俺にとっては…だが。
少ししなった衣のエビフライを咀嚼しながら、俺はそんな後輩を見つめる。
やっと答えを出した理玖は満足そうにお弁当を食べ進めた。