第2章 伸ばした手が触れる残像。
「なんで拓真が泣きそうなの…?」
開けた視界に入ってきた拓真の顔は歪み、ちょっとした衝撃で涙がこぼれそうな程瞳が潤んでいる。
「…っ、ごめん…」
こんな顔…俺は知らない。
あ、こいつ前より身長伸びた…?
泣きそうな拓真を前にした俺の頭は反対に冷静になっていく。
ずっ、と鼻をすすって擦り過ぎてヒリヒリとする目元を指先で撫でる。
「…無理。…もっ、限界。…悠…ごめん」
掠れた声が微かに耳に届いた瞬間、俺の体はぐいっとたくましい腕に引かれ拓真の胸にダイブした。
震えている。
拓真が…泣いている。
温かい涙が肩口に染み込む。
小さな嗚咽。
……拓真、お前も…俺と同じ気持ち?
じわりと感染した涙が視界を歪ませる。
手を伸ばせば触れる距離にいる拓真を、俺は力一杯抱きしめた。