第2章 伸ばした手が触れる残像。
パチパチと何度か瞬きをしても消えない目の前の人物に、ふつふつと怒りが込み上げて来て俺はぎゅっと枕を強く掴んだ。
「悠…ただい」
ボフッ!!!!!
「っ?!!!」
やつが言葉を言い終わる前に宙に投げた枕は見事に顔面にヒットし、拓真の体がグラリとよろめく。
「はぁっ、……っく」
力一杯投げたせいで、俺は肩で息をする。
目の前の拓真は怒るでもなく、ただぶつけられた箇所を手で押さえていた。
その反動で倒れたと思われるキャリーケースが、拓真がこの家に帰って来たのだと誇示している。
やっと会えたことの喜び。
黙って居なくなったことへの怒り。
渦巻く感情を上手く言葉に出来ず、もどかしさから俺の目にはまた涙が溜まる。
……っざけんな…。
「ふざけんなよっ!!!!!」