第2章 伸ばした手が触れる残像。
過去の恋愛だと割り切る事が出来ずに、ぐるぐると俺の中で渦を巻く。
…俺も大概女々しいやつだな。
パチン…。
静かな部屋に携帯を閉じる音だけが寂しく響く。
この部屋には思い出が多すぎる。
引っ越すことも考えたが、いつもギリギリのところで拓真との記憶が過ぎり躊躇っていた。
この家の合鍵を持っている拓真がいつか帰ってくることを期待して。
…それももうやめねーとな。
いつまでもあの時のままで居るわけにはいかない。
いつかは区切りを付けて前進しなければいけないのだ。
…もう充分だ。
もう充分だろうー…?