第2章 伸ばした手が触れる残像。
あの時すぐに拓真を追いかけていれば、今の状況は変わっていたのだろうか。
隣には変わらず拓真の姿があったのだろうか。
ーーー否。
それは友達としての一線を越えてしまった時点で難しかっただろう。
どの道、元の関係には戻れなかったのだ。
「……っ」
溢れそうな涙を堪えて手を伸ばしてやっと届く距離にある携帯を手繰り寄せる。
カチカチと操作した後、画面に映し出されたのは…。
【柊 拓真】
繋がることがないこの電話帳の名前を消せずにずっと引きずってきた。
なんで繋がんねーんだよ…。
拓真が居なくなってすぐ俺は電話を何度もかけたが、電話の向こうから聞こえるのは無機質な機械音声だけだった。