第4章 Mighty Long Fall
[高材逸足]2
そしてそこから一時間後、記事の下書きを書き終えた奈々美は、冬獅郎にその確認をして貰っていた
彼女自身この様な論文を書く事は久しぶりだった為、無性に緊張していたのだ
一つひとつの文字を丁寧に読み砕いてく冬獅郎
奈々美の喉はゴクリと音がした
「…どうですか?すごく久しぶりに書いたので何とも言えないのですが…」
「いや、大丈夫だこのまま本番いってもいい。にしても上出来だ。俺でもこんな文章書けねぇぞ」
そう言いながら奈々美の書いた数枚の紙を机の上で纏めると、彼女に手渡した
「ありがとうございます!良かったぁ」
安心した様に奈々美が笑顔になり紙を受け取ろうとすると、冬獅郎は奈々美が紙を掴むより早く紙を手放してしまった為、紙たちはそのまま床へ散らばってしまった
「あ、悪い落としちまった」
「あ、いえ。こちらこそすいません!」
慌てて床にしゃがみ込み紙を拾う二人
しかし最後の一枚を拾おうとした二人の手は、冬獅郎の手が上に覆い被さる様にして重なった
「すいません!!」
奈々美が慌てて手を退けようよとしたが、それは冬獅郎の手によって阻まれてしまう
「…え、隊長?どうなされたんですか?」
掴まれた手はそのまま
奈々美は下に俯いている冬獅郎を覗き込む様に見た
「…昨日の事は…」
少し赤面しながら言葉を紡ぐ彼
その声の小ささから奈々美は耳を澄ませた
「昨日の事は?」
「…昨日の事は、お前は無かった事にしてるかも知んねぇけど、俺はそんな事はしねぇ。むしろあのままで良かったと思ってる」
そう言うと、冬獅郎は熱のこもった目で奈々美を見詰めた
奈々美の頬も徐々に赤く染まっていく
「そんなの…
私だって無かった事になんて出来ませんよ」
高材逸足(コウザイイッソク):優れた才能、またその持ち主