第4章 Mighty Long Fall
[親戚朋友]1
~~四番隊隊舎 七○三号室前~~
「どうしたそんな所に立ち止まって。中に入んねぇのか?」
桃の病室の前まで来て急に立ち止まる奈々美を見て、冬獅郎が怪訝そうに尋ねた
「すいません何でもないですから。さぁ隊長からどうぞ入ってください」
冬獅郎を促すと、一つ遅れて自分も病室に入って行った
彼が扉を開くと、その中には心待ちにしていたと言わんばかりの笑顔を向けた黒髪の少女の姿
「シロちゃん!!」
「おう雛森。昨日は来れなくて悪かったな。元気にしてたか?」
「うん!ずっとシロちゃんが来てくれるのを楽しみにしてたの」
(…まただこの感じ。喉の奥がヒリヒリして痛い)
桃に笑顔を向け病室に入って行く冬獅郎とは対照的に、入り口で立ち止まり下を向いている奈々美
「楠木入んねぇのか?」
冬獅郎の声にハッとし前を見ると、こちらを見ている二人の姿があった
(おかしいなぁ確かにここに来る前までは凄い楽しみにしてたのに、いざ来てみると早くここから抜け出したいって思っちゃう。…なんて言うか…疎外感?)
こう思うも、奈々美は重たい足を持ち上げ中に入って行ったのだった
「え?林檎持ってきてくれたの?嬉しいなぁ今食べたいって思ってたの」
差し入れとして持ってきた林檎を見て、桃は明るい表情になった
「じゃあ私コレ剥いて来ますね。ちょっと待っててください」
「おぅ悪いな楠木。頼むぞ」
すかさず奈々美は言うと冬獅郎の声に振り向かず逃げる様にその場を去った
それを見て不審に思う冬獅郎
(何かアイツここ来て変じゃねぇか?妙に俺たちに気ぃ遣ってるっていうか…)