第4章 Mighty Long Fall
[親戚朋友]2
「ハァ~…」
個室の離れまで来て溜め息をついた
隊長格ともなれば与えられる病室は必然的に広くなる
なので少しの音なら聞こえずに済むのだ
『私、シロちゃんの事が好きなんだ』
ここへ来て思う事は大体一緒
こちらまで聞こえてくる二人の話し声に虚しさを感じる
「…駄目だ。気にしちゃいけない」
と、自分に渇を入れ思い切り包丁を林檎に投入した
「すいませんお待たせしました」
丁寧に切った林檎を持って行った時に冬獅郎が奈々美の指を見て、ある事に気付いた
「お前、人差し指から血ぃ出てんぞ。指…切ったのか?」
彼の言葉でやっと左手の人差し指に伝わる微かな痛みに気付いた奈々美は、林檎ののった皿を置くと慌てて左手を見た
「あ…本当だ。すいません私ボーっとしてて。ちょっと絆創膏貰いに行ってくるんで、二人で話しててください」
もう一度すいませんと言うと、足早にその場を去ろうとした
だかそれは突然奈々美の腕を引いた冬獅郎によって阻まれてしまう
「本当に大丈夫か?心配だから俺も行くよ。雛森ちょっと待ってろ。すぐ戻ってくるから」
「えっ?!いいです絆創膏ぐらい一人で貰って来れますから!日番谷隊長は雛森副隊長と話しててください」
奈々美が必死に押し返そうとしても微動だにしない冬獅郎
「そうゆう問題じゃねぇ!お前に少し話したい事があるんだ。行くぞ」
(なんで一人きりにさせてくれないのよぉーっ!!)
「なんでっ?!話ならここですればいいじゃない。それとも私がいると都合悪いの?」
「…すまん」
自嘲気味で桃が言うが、冬獅郎は一言謝ると奈々美の手を引き、その場を出て行った
親戚朋友(シンセキホウユウ):同じ血筋の者や、友人たち