第3章 Lonely warrior
[沈痛慷概]2
ただし、その感覚に溺れていたのは一瞬だけ
日番谷隊長は急に私から視線を外し、下を向いた
「わっ悪い…!今のは冗談だから。聞かなかった事にしてくれ」
…冗談?…聞かなかった事にしろ…?
何それ
私の中で湧き上がる感情
これは喜怒哀楽の『怒』だ
━━いや違うこれじゃない
そうだこの気持ちは『哀』なんだ
━━私は悲しい
でもこの時の日番谷隊長の真意を私は知らなかった
視線を机へと落とした際の隊長の顔色も
「…冗談なんてフザけんじゃないわよ!私のドキドキを返せ!この馬鹿チビ!!」
バァンッ
この捨て台詞を吐いて私は執務室を飛び出した
隊舎を出て帰ろうと足を進めていて気付いた事
「…あれ私、泣いてる?」
その事に驚いて手の甲で涙を拭ってみるも、溢れ出す滴は止まる事を知らない
(私そんなにさっきの事気にしてたんだ…)
あまり認めたくは無いけど頬を流れる涙がそうだと言っている
「おい楠木じゃねぇか。って何で泣いてんだよ!!」
突然背中に掛けられた言葉に振り向くと、そこには檜佐木副隊長がいた
私のこの有り様を見て相当ビビってる…
「…檜佐木副隊長…」
本当、どうしたんだろ私
沈痛慷慨(チンツウコウガイ):深く心に悲しみ、嘆くこと